外出を控えることが多くなったこの1年、「体重が増えた」「プチうつ状態」「免疫が弱くなった気がする」など、コロナ禍の思わぬマイナス面が浮き彫りになっています。
屋内に長くいることでビタミンD不足になりがち、そしてそれが体重、メンタル、免疫にも影響を及ぼすことを知っていますか?
ビタミンDの不足は骨の異常だけでなく、血管疾患、筋力低下、がん、感染症などと関連していることが報告されて、さまざまな面で健康状態にマイナスになることが明らかになってきました。
ビタミンDの効果・作用を知れば知るほど、大切な栄養素だと分かります。その重要性を中心に、ビタミンDを多く含む食品や、過剰摂取による副作用までご紹介いたします。
実は今も足りていない、日本人のビタミンD
昭和30年頃まではビタミンDの不足で骨に異常が起きる子供が多かったため、ビタミンDが豊富な鱈(タラ)から取った肝油を子供に飲ませる習慣がありました。
食生活が変わって肝油を飲む人は少なくなりましたが、実は今も日本人の体内のビタミンDは十分ではなく、潜在的ビタミンD欠乏状態の人が多いと言われています。
ビタミンDが不足すると血中カルシウム濃度を維持するために副甲状腺ホルモンが増加して、副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムを放出してカルシウム濃度を維持するため、骨がもろくなるのです。
ビタミンDはサンシャインビタミンとも呼ばれていて、日本(北半球)の4月から9月の期間は十分に陽に当たっていれば不足することはあまりない、と言われていました。
しかし、最近は注意が必要になっています。
ビタミンD不足は下記にあげたような時などにも、おこることがあります。
- ダイエットなどで食事から充分な量を摂取できなかった時
- 消化器からの吸収が不十分な時
- 腎臓で活性型のビタミンDに変換されない時
そのほかにも下記のような点に注意が必要です。
ビタミンD不足の可能性が高くなるかもしれない3つのチェックポイント
- 紫外線対策(UV剤・UV衣服)を日常的に使用している
- 10月〜3月、梅雨の時期など、日照量が少ない時期
- 屋外にいる時間が少ない(コロナ禍では特に注意)
アメリカ国立衛生研究所は「ビタミンDの不足は世界的な問題である」と指摘しています。なかでも、日本人のビタミンD濃度は低く、厚生労働省は2018年12月にビタミンDの摂取基準値の引き上げを発表しました。ビタミンDは健康の維持に欠かせない栄養素として知られています。
1週間に2回以上、午前10時から午後3時の間に5分から30分(日光の強さで変わる)程度、日焼け止めを塗らずに、顔、腕、脚、背中に日光を当てなければ十分なビタミンDが合成されないということが分かっています。
紫外線B波はガラスを通過しないので、屋内で窓越しに「ひなたぼっこ」していてもビタミンDは生成されません。屋外でも車で出かける場合でも、最近の車のガラスはUVカット性能が備わっているので、ビタミンD合成という点で考えると注意が必要です。
ビタミンDが不足すると、骨の痛みや筋力低下といった症状が現れますが、初期の段階では症状が軽く、「年齢のせい」「運動したせい」と見逃してしまうケースもあります。
骨だけじゃない。心身の健康に関わるビタミンDの効用
近年の研究で、ビタミンDの健康に対する効用が明らかになってきました。
すでに骨粗鬆症(骨粗しょう症)の治療薬としてビタミンDが処方されたりと、骨の健康については検証されているビタミンDですが、最近の研究では次のようことが分かってきました。
ビタミンDは多くの意味で身体にとって重要な栄養素
ビタミンDの効用
- 免疫力の向上・アレルギー症状の改善
- うつなどのメンタル不調を改善
- 肥満、除脂肪体重に関係する
ビタミンDの作用は、全身の組織にあるビタミンD受容体を介します。小腸、腎臓、骨でカルシウム代謝調節を行っていることは良く知られていますが、そのほかにも、
- 細胞の増殖や分化の調節作用
- 免疫の調節作用
- 骨格筋機能の維持
- 血圧の調節作用
- 心血管系疾患関与
などにも関わっています。
1. 免疫力の向上、アレルギー症状の改善
ビタミンDには細菌やウイルスを殺す、カテリジンという抗菌ペプチドを作らせる働きがあります。カテリジンは好中球(白血球の一種)から分泌されて、細菌だけでなくウイルスの膜に穴をあけて殺す働きがあります。また、β-ディフェンシンという抗菌ペプチドを皮膚上に作らせ、バリア機能を高めることもわかっています。
このように、ビタミンDには免疫力の向上やアレルギー症状を改善する作用があることが報告されています。
まだ研究途中の報告ですが、体内のビタミンDの値が、がんのリスクに影響を与える可能性も指摘されています。ビタミンDは大腸癌、前立腺癌および乳癌の予防に関与しているという報告もあります。
ビタミンD不足が、がんのリスクを増大させるのか、ビタミンDを増やすことでがんに対する予防効果が得られるのか、その解明のために研究が進められています。
最近、アレルギー発症の要因の1つに腸の関与が指摘されています。腸の粘膜細胞の結合がゆるんでバリア機能が崩壊するリーキーガット症候群になると、未消化のタンパク質や糖、アレルゲン(花粉など)などが腸から漏れて体内に入ってしまうため、アレルギー反応をひきおこします。
遅延型食物アレルギーもリーキーガット症候群が原因ではないかと考えられています。ビタミンDは、腸粘膜の結合状態を改善して、適切な免疫抗体の産生を促すので、アレルギー症状を改善すると言われています。
2. うつなどのメンタル不調を改善
ビタミンDが心や神経のバランスを整える脳内物質セロトニンを調節することが近年の研究でわかってきました。「うつ」などのメンタル症状に効果があると言われています。
日照時間の短い冬に抑うつ症状の患者が増加して冬期うつと呼ばれていますが、これは、日照時間が短くなり、ビタミンDが不足することが一因ではないかと言われています。
3. 肥満、除脂肪体重に関係する
栄養代謝の研究で、ビタミンDのサプリメントを1年間服用し、健康的な成人の身体組成や体力にどのような影響が出るのか調べた報告があります。
95人の被験者の半数にビタミンD、残りの半数に偽薬(プラセボ)を飲んでもらい、1年後に被験者の除脂肪体重と体脂肪率を測定して1年前のデータと比較しました。さらに、筋肉や心肺の機能を調べる運動のスコアで被験者たちの体力も測定しました。
この結果、ビタミンD3のサプリメントを服用していたグループは、除脂肪体重(脂肪以外の体重)の増加が著しく目立っていた、つまり筋肉や骨が増えたのに対し、偽薬を服用したグループは変化がなかったと報告されました。
体力測定については、2つのグループに違いは見受けられませんでした。
ビタミンDの値と糖尿病や体脂肪との関連は、すでに指摘されていますが、その点についても研究が進められています。
積極的にビタミンDを摂って、健康を維持
ビタミンDを得るためには2つの方法があります。食べ物から摂る方法と、日光を浴びて体内でビタミンDを合成する方法です。食物から摂るビタミンDは、ビタミンD2が植物由来、ビタミンD3が動物由来です。
健康を維持するためには、ビタミンDを食品やサプリメントから積極的に、こまめに摂ることが大切になってきています。
ビタミンDを多く含む食品
ビタミンDは、きのこ類、魚介類、卵類、乳類に多く含まれており、どれもスーパーで購入できるものばかりです。
ビタミンDは脂溶性ですので、脂質を含む動物性食品から摂取したほうが吸収されやすいといわれています。きのこ類は炒め物など油を使った調理方法にするとよいでしょう。
動物性 |
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牛のレバー | ||
バター、チーズ、卵黄 | ||
植物性 |
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ビタミン類はこまめに摂取することが大切ですが、これらの食品にアレルギーがあったりなど偏ってしまいがちな方は、サプリメントを活用してみてはいかがでしょうか。
ビタミンDの副作用について
皮膚で作られるビタミンD量は調節されているので、必要以上は産生されません。
サプリメントなどで多量のビタミンD摂取を続けると、高カルシウム血症、腎障害、軟組織の石灰化障害などが起こることが知られています。
ビタミンDはとても大切な栄養素ですが、まずは、
- 規則正しい生活
- バランスの良い食事
- ウォーキングなど屋外での適度な運動
これらを心掛け、サプリメントは栄養補助食品として1日の摂取目安量を守り活用しましょう。